Wine maker analyzes ”Uozu”

ワインメーカーが”魚津”を分析

魚津の風土がKANATA WINERYのワインに与える影響を、ワインメーカーの土井が、

それぞれの要素をピックアップして分析します。

ぶどう

土壌

黒ボクと赤土と

KANATA WINERYのブドウ畑がある魚津市天神山の丘陵地帯は、地表数cmから30cmくらいに耕作土である未熟黒ボク土があり、その下に大陸からの黄土や西日本の火山灰が起源とみられる赤土が堆積しています。

赤土は、梅雨期に雨が多いところでは、作物栽培に適さないとされるのが一般的です。

水はけが良い丘陵地

ただ当地は、丘陵地帯という地形に加え、礫(れき)が多く含まれることから、粘質土壌の中では水はけが良い特質を示します。これらの要因により、ぶどう生育初期には生育が旺盛となるのが特徴です。そして梅雨明け後の急激な乾燥により、根からの養分の吸収が減り、枝葉の成長が抑えられることで、果実の良い成熟がもたらされます。

見渡す自然

気候

実は温暖な気候

魚津の気候は、日本海側にあることもあって冷涼なイメージをもたれるかもしれませんが、世界の有名産地と比べるとワイン用ぶどうを栽培する上では温暖な部類にあるといえます。このことは、晩生品種であってもぶどう果実が十分に熟することを意味します。


ただ、ワインの教科書にもあるとおり、成熟期の高温は、ぶどうの色づきを悪くします。ネガティブな要因ですが、丘陵地帯にあるKANATA WINERYのブドウ畑の場合、夏季は海陸風が顕著で、昼は海風が吹き上げ、夜には山から吹き下ろす風が吹き、その影響から夜に気温が下がりやすいため、そこまでネガティブサイドには捉えてはいません。

雨にあたる花

多雨を逆手に取ったワイン用ぶどう栽培

同じくネガティブな要因とされる、2,500mm超に達する年間降水量ですが、病害の多発生や枝葉の過剰な成長などにより果実の品質低下が懸念されるものの、気候の妙も手伝い、良いブドウを育てる上でマイナスポイントとは考えていません。


梅雨期の多雨と梅雨明け後の高温乾燥のギャップが樹へのストレスを増大させ、果実の糖度を上げる、つまり果実の成熟にプラスに働く可能性が高いこと。そして、梅雨明けがちょうどブドウの着色期であるヴェレゾン期にあたること。これら2つがその理由です

北アルプスの恩恵を受ける

魚津では、小学生のころから「魚津の水循環」を教えられます。これは富山湾の海水が蒸発して雲となり、市の東側にそびえる北アルプスの山々に雨や雪となって降り注ぎ、また海へと戻っていくことを示す言葉です。


魚津は、海抜0mから標高2400m超の山岳地帯までが、奥行きわずか約25kmに収まる大変急峻な地形となっています。ごく狭い範囲で起こる壮大な水循環が土壌中の余分な養分を洗い流す重要な役割を担っており、ぶどう栽培にとってもプラスに働いていると考えています。

畑
川

果樹栽培のルーツ

魚津市の市街地は北アルプスを源流とする片貝川の扇状地上に広がっています。山と海が近く急峻で変化に富んだ地形でもあり、明治時代にオランダから来た土木技術者が滑川市との市境を流れる早月川をさして、「これは川ではない、滝だ」と言った逸話が残っています。


こうした急峻な地形と扇状地の土壌の特性から、魚津市では古くから果樹や野菜の栽培が盛んでした。川がもたらす恩恵は様々ですが、伝統とも言える果樹栽培を生み出したルーツの一つともいえると考えています。

2000年も朽ち果てない

片貝川などの河川の水は、急峻で一気に流れることから清冽な流れをつくっています。また地下に潜った水は伏流水となり、市内各所に湧き出しています。この伏流水は、なんと富山湾の海底からも大量に湧き出しています。


このきれいな水があったからこそ、約2,000年前に埋もれた杉の原生林が埋没林として現代まで朽ち果てずに残ったと考えられています。ワイナリーで展示している埋没林は「魚津の水」の象徴でもあります。

水
食

「昆布締め」文化

魚津には、魚津港、魚津南港、経田漁港の3つの港があり、日々、多種多様な魚介が水揚げされています。この「多種多様さ」は、天然の生簀と呼ばれる富山湾の中でも突出しています。これは魚津の水循環と無縁ではありません。 また、魚津は北前船の寄港地の一つでもあり、昆布文化が定着しています。郷土料理の「昆布締め」もこうした歴史の中で生活の知恵として生み出されたものです。

バイ貝は魚津のエスカルゴ

稲作、果樹栽培、野菜栽培も盛んで、山も近いことから山菜やジビエも豊富です。こうした環境が、魚津の食に直結しており、郷土料理や和食だけでなく、洋食などの料理にも大きく影響しています。バイ貝をエスカルゴのように調理した洋食を食べられる場所は、世界中探してもないと思います。

人の特徴

常識を覆す、先陣を切るような力強さ

「あなた」のことを「ば」と呼ぶのは魚津の特徴。突然言われると驚きます。漁師町が多い魚津なので、気性があらいイメージもある魚津人。ただ、それは照れ屋なぶっきらぼうさが生み出したものだと思っています。とにかく常識を覆すような、先陣を切るような力強さを持っており、大正時代の米騒動のように女性が活躍する街でもあります。

他から謙虚に学ぶ「魚津のDNA」

果樹栽培で言えば、120年余りの歴史のあるりんご産地の農家さんは、かつて青森や長野に修行に行き、先進地の技術を学びながら、魚津の気象や土壌条件に応じたオリジナルな栽培技術を作り上げました。昭和の終わり頃から、富山県内にりんご栽培を広げるために、持っている栽培ノウハウを惜しみなく新興りんご産地に注いできました。その心意気は「魚津魂」と言うべきか、「魚津 DNA」と言うべきか。これはKANATA WINERYもしっかり受け継いでいかなければならないと強く感じています。

ぶどうを眺める

Tenjinyama,Uozu

Tenjinyama,Uozu